和痛?無痛?完全無痛?ちがいは?
「和痛」「無痛」「完全無痛」は、いずれも硬膜外麻酔を用いた分娩法ですが、その主な違いは「麻酔の濃度や量による痛みの緩和レベル」にあります。マイルドに和らげるのが和痛、しっかり取るのが完全無痛、その中間が無痛と呼ばれます。大切なのは名称の定義よりも、自分の希望するタイミングで、理想の強度まで痛みをコントロールしてもらえるかです。安全性と満足度を両立させるための、医師との相談のポイントを解説します。
無痛分娩を検討し始めると、病院によって「和痛」や「完全無痛」といった異なる呼び方があり、「自分にはどれが合っているの?」と迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
実はこれらの言葉は、医療上の厳密な定義があるわけではなく、施設ごとに痛みの取り具合を表現するために使い分けられているのが現状です。
今回は、アメリカでの経験も踏まえ、麻酔科医の視点からこれらの違いをシンプルに整理し、後悔しないための病院選び・先生との相談のコツをお伝えします。
無痛分娩=硬膜外麻酔
一般的に、無痛分娩という場合、硬膜外麻酔を指します。硬膜外麻酔では、背中に細いチューブ入れ、脊髄という神経の束に麻酔をかけます。木で例えるなら、幹に近い、太い部分に麻酔をかけるため、それより、先にある細い枝や葉っぱも麻酔が効いているような状態です。お腹の痛みが神経を通り、脳へ信号が伝わる、その過程を麻酔でブロックします。子宮が収縮→脊髄→脳→痛いと感じる。この経路でいう脊髄のところで痛みをブロックします。
結論
どれも同じ硬膜外麻酔を使い、痛みを取ります。痛みをどれだけ取るかで、名前を変えています。麻酔の濃度や量を増やして、完全に痛みを取るもの『完全無痛分娩』、それを逆に減らしてマイルドにしたものを『和痛分娩』、そのあいのこを『無痛分娩』と呼びます。
和痛分娩とは
和痛分娩とは、無痛分娩の中でも一番マイルドのものを指します。硬膜外麻酔という麻酔を使うところまでは同じですが、薬の濃度や量を減らして、麻酔の効き具合を調整します。
まれに、痛み止めの筋中などを和痛分娩と呼ぶ施設もあるようなので、確認することをお勧めします。
完全無痛分娩とは
完全無痛分娩とは、無痛分娩の中でも一番効き目が強いもの。その分、低血圧や吐き気などのリスクも高い。
ママさんはどのように選ぶべきか。
自分がどこまで痛みを取るか、担当の先生と相談するのがベストです。理想的には、必要に応じて、痛みをとってくれる施設がいいですよね。例えば、自然分娩で始めたけど、やっぱり無痛分娩に切り替えたいなど。実際、アメリカではこのような無痛分娩の呼び分けはなく、切り替えも自由です。僕は本来はママさんのご要望に応じて、痛みの取り具合を相談していくことが満足度と安全性の両方を求めていく最良の選択肢だと信じております。
このような名前における分類は、無痛分娩でも全然痛みを取ってくれなかったなど、色々な背景から生まれてきたのかなと思います。でも、最小に2つの質問をすれば、お互いの期待値をすり合わせることが可能になります。
聞くべき2つの質問
まずは『いつから無痛分娩を始めるか』
ママさんの希望に応じて始まる。これが理想です。
『子宮口開大が5cmまで待ちましょう』『痛みが強くなってから』など、施設によって、開始のタイミングはそれぞれです。なので、しっかり自分の痛みへの強さに対応してくれる施設選びが鍵になります。痛みに弱い人は、なるべく早いタイミングで入れてくれる場所選びが大切です。
次は『どれくらいまで痛みを取るか』
これは和痛、無痛、完全無痛という言葉に置き換えてもいいかもしれません。僕はペインスコアでマックス10だとすると、2−3くらいを目指しますねとママさんに説明しています。具体的には、寝れるくらい、生理中の少し重いときくらいです。これもどこまで痛みを取るかはママさん本人が決めるのが理想です。ただし、痛みを完全に除去することがゴールではなく、ママさんと赤ちゃんが健康に出産体験を終えることが最終的なゴールなはずです。そのためには、ママさんにも薬による良い面(作用)と悪い面(副作用)を理解して頂き、決断できるお手伝いをしています。
おわりに:大切なのは「名前」ではなく「対話」です
日本独自の呼び方の違いに惑わされる必要はありません。大切なのは、あなたがお産に対して抱いている「恐怖」や「希望」を、担当医に素直に伝えられるかどうかです。
麻酔の技術は、ママが前向きに出産に臨むための強力なサポーターです。作用(メリット)と副作用(リスク)の両方を正しく理解した上で、あなたが一番「自分らしい」と思えるお産の形を一緒に見つけていきましょう。