無痛分娩は「麻酔分娩」に改名すべき?なぜ痛みがゼロにならないのか

このコラムを一言で説明
【麻酔科医の見解】無痛分娩の呼び方は変えるべき?日米の決定的な違い

Yahoo!ニュースで話題となった「無痛分娩」の呼び方を巡る議論について、現役の産科麻酔科医が動画とともに徹底解説。「無痛」という言葉がプレママに与える誤解と医療現場のプレッシャー、そして「結果」で呼ぶ日本と「手法(エピデュラル)」で呼ぶアメリカの決定的な違いとは?近年提案されている「麻酔分娩」という呼び方の是非や、名前の裏にある正しい理解の大切さについて分かりやすく紐解きます。

【麻酔科医の見解】無痛分娩の呼び方は変えるべき?

先日、Yahoo!ニュースでも大きく取り上げられ、SNSで活発な議論を呼んだ「無痛分娩の呼び方」に関するニュースをご存知でしょうか?「『無痛』という名前は誤解を生むから『麻酔分娩』に変えるべきでは?」という趣旨の論争です。

「『無痛』という名前は誤解を生むから『麻酔分娩』に変えるべきでは?」という趣旨の論争です。
「無痛分娩」の呼び方変えませんか 日本麻酔科学会が〝新名称〟を提案 裏にある医師らの強い思いとは…
(参照:Yahoo!ニュース配信記事

このニュースに対して、私たち産科麻酔科医が普段どのような思いを抱えているのか、そして日本とお産先進国であるアメリカとでは「呼び方」にどんな決定的な違いがあるのかを、動画を交えて分かりやすく解説します。

▼ 【動画でサクッと見る】現役麻酔科医が語る「無痛分娩」のネーミング論争

実際の医療現場でのプレッシャーや、日米の意識のズレについて動画でも詳しくお話ししています。ぜひ合わせてご覧ください。

>>永井先生の解説リール動画はこちら(Instagramへ遷移します)

無痛分娩は「麻酔分娩」に改名すべき?なぜ痛みがゼロにならないのか

「無痛」という言葉が引き起こす、プレママと医療現場のギャップ

「無痛分娩」という漢字を見ると、誰だって「痛みが完全にゼロになるんだ!」というイメージ(謳い文句)を持ってしまいますよね。命がけの出産ですから、痛みを避けたいと願うのは当然のことです。

しかし、医学的なリアルをお話しすると、お産の進み方や個人の骨格によっては、一時的に痛みを感じる場面はどうしてもゼロにはできません。そのため、言葉のイメージが強すぎると、少しでも痛みがあったときに「無痛分娩なのに痛かった!これじゃ詐欺じゃないか」と、プレママ側が強いショックや不信感を抱いてしまう原因になってしまうのです。

実は、日本で無痛分娩を担当している多くの医師やスタッフも、「絶対に痛みをゼロにしなければならない」という、この言葉の重みによる凄まじいプレッシャーの中で日々麻酔の管理を行っているのが現状です。

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【日米比較】「結果」で呼ぶ日本 vs 「手法」で呼ぶアメリカ

ここで、無痛分娩の実施率が高いアメリカの事例を見てみましょう。実はアメリカでは、「痛みが無くなるお産」のような【結果】にフォーカスした名前では呼ばれていません。

アメリカでは一般的に、無痛分娩のことを「Epidural(エピデュラル=硬膜外麻酔)」と呼びます。これは「背中の硬膜外腔というスペースに麻酔を入れる」という【医療の手法(やり方)】そのものを指す言葉です。

この「呼び方の文化のズレ」を一覧表に整理してみました。

一般的な呼び方 言葉が持つニュアンス
日本 無痛分娩 【結果】にフォーカス。
「痛みが全くない」という過度な期待や誤解を生みやすい。
アメリカ Epidural
(硬膜外麻酔)
【手法】にフォーカス。
「全身麻酔」か「硬膜外麻酔」かを選ぶという感覚で、お産の方法として冷静に定着している。

このように、アメリカでは「手法」で呼ぶため、妊婦さんも『麻酔の医療行為を受けているんだから、多少の感覚の残りやズレはあるものだ』と自然に受け入れやすい土壌があります。一方の日本は「結果」を名前にしてしまったがゆえに、理想と現実のギャップによる誤解が生じやすいという背景があるのです。

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「麻酔分娩」への改名は賛成?これからの理想の呼び方

今回のYahoo!ニュースの議論のように、最近では日本でも「無痛分娩」ではなく「麻酔分娩」と呼ぶのがいいんじゃないか、という声が医療従事者やメディアからも上がっています。

私個人の見解としては、呼び方を「麻酔分娩」に変えることは、医療行為としての正確性が伝わり、過度な誤解を減らすという意味で非常に良いアプローチだと感じています。しかし、最も大切なのは「名前をどっちにするか」という議論そのものよりも、「麻酔を使ったお産のメリットもリスクも、ママたちが正しく納得して選べる環境を作ること」です。

まとめ:名前の裏にある「正しいリアル」を知ろう

「無痛分娩」でも「麻酔分娩」でも、その本質は変わりません。それは、陣痛の激しい恐怖からママを解放し、産後のノンストップ育児に向けて大切な体力を温存するための、非常に優しく、かつ合理的な医療の選択肢であるということです。

ネットの極端なニュースのタイトルや「無痛」という漢字のイメージだけに振り回されず、信頼できる専門医の元で正しいリアルを学んだ上で、ご自身にとって一番納得のいくバースプランを見つけてくださいね。私たちはいつでも、あなたのお産の安全を全力でサポートしています!

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プロフィール

Profile

永井 遼太郎NAGAI RYOTARO

M.D. 麻酔科医

経歴

  • 獨協医科大学 卒業
  • アメリカ医師国家試験(USMLE)合格
  • 帝京大学麻酔科 入局
  • Maimonides Medical Centerにて
    アメリカ式の麻酔科研修を4年間受ける

資格

  • アメリカ麻酔科専門医

獨協医科大学を卒業し、故郷の千葉で初期研修を受ける。

ニューヨーク州ブルックリンにある、Maimonides Medical Centerにてアメリカ式の麻酔科研修を4年間行う。

その際、人生で初めて無痛分娩に触れ、快適に分娩が出来るという素晴らしさを知る。

当時2016年、日本とアメリカでは、無痛分娩率に10倍以上の差があるという事実を知り、衝撃を受け、今の自分に出来ることはないかと思い、2021年より、インスタグラムにて無痛分娩に関する投稿、オンライン講演を開始。

2024年からはさらに活動を本格的にするため、Youtubeチャネル『無痛分娩ビレッジ』をスタート。

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